音色
 すっかり変わってしまった、と思っていたのを心の中で即座に却下する。

 留学で性格まで変えてくればよかったのに。

「なによ、あの横暴な手紙は? どうしてわたしだけなの? あんなメッセージまで残して」
 矢継ぎ早に飛び出す利香のあれこれを人差し指1本で止め、光はこう言った。
「ここ、すぐ引き払う。送ってやるから一緒に来い」

 有無を言わせぬこの口調。
 腹は立つけれど、反論できない。そんな自分にいちばん腹が立つ。

 後片付けはもう終わっているらしく、すれ違う数人のスタッフに挨拶をしながら通用口に向かう光の後ろで、頭を下げながら利香は続く。

「これ、かぶっとけ」
 通用口はすぐそこ。というタイミングで、ぶかぶかの帽子を頭の上から被せられた。
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