音色
 運転手に
「『月のなみだ』にいるそうです」
と告げられ、
「お願いします」
と返すと、光は利香の隣で目を閉じた。

 いろいろ訊きたいことがあるのだが、しんと静まり返った車内では口が重くなってしまい、利香は黙り込んだまま見慣れた光景を見るともなしにぼーっとしていた。

 地方都市の22時過ぎとはいえ、繁華街はそれなりに賑わっている。
 出待ちしていたあの人たちは、どうなっただろうか。
 そんなことを思っていた。

 移動時間は僅か数分。繁華街から少し離れた裏道で、ふたりを乗せた車は止まった。
 きょろきょろ、周りを見回す。
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