。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
車に乗り込み響輔がキーを捻ると、前向き駐車していたあたしの車を急バック。
倒れた男たちがそれぞれ起き上がってきて、必死に手を伸ばすも、その間を響輔はうまくバック。
キっ!とタイヤの軋む音が響いて
「しっかり掴っとき。俺の運転ちーっと荒いで」
響輔は助手席に座ったあたしの頭の後ろに手を置き、後ろを気にしながら片手でハンドルを操る。
お姫様抱っこに、バックハンドル。
今日はサービスデーかしら。
響輔を近くに感じて、スリルなのかそれとも恋心なのかあたしの心臓はバクバクしっぱなし。
響輔はこれまた見事な手さばきでハンドルを操りギアを入れ替えると、バックしたまま急角度に曲がり、大通りに出るとアクセルを思いっきり踏んだ。
ぐん
と背中がシートに押されて、体が前のめりになる。
どこか当てがあるのだろうか、ただひたすらに車を走らせる響輔の横顔を眺めた。
その顔はいつもと同じ無表情だったけれど―――どこか真剣身を帯びていて―――
人って恋をするとこうまで変わるのね。全然好みじゃなかったのに。
やっぱり…かっこいい。と思ってしまう。
じっと見つめていると
「何や。運転荒い言うたやろ?」
響輔が心外そうに言ってちょっと目を細める。
「違うわよ。すっごいドライビングテクだなって思って。カーアクション見ているみたいだったわ♬」
ご機嫌に言うと
「そうやったね、あんたもスピード狂やったな」
響輔の横顔は甘くて淡い笑みが浮かんだ。
信号が赤信号で停車すると―――
響輔はそのままの笑顔でこちらを振り返り、
あたしの口元にそっと指を這わした。