。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



――――


――


「俺やなかったら鴇田さんやないの?」


響輔はスパゲッティナポリタンをフォークに巻き付けながら上目であたしを見上げてくる。


昔ながらのケチャップ味のシンプルなあれ。赤ウィンナーとピーマン、玉ねぎなんかの具が入ってるやつ。


何の変哲もないナポリタンなのに、響輔が口に入れる度、咀嚼する度に


一々ドキリと心臓が鳴る。


形の良い薄い唇から覗いた赤い舌が唇のソースを舐めとる瞬間とか……


何だかとっても色っぽいし……


ただのナポリタンなのにそれが高級食材に見える。


………


やだ


あたしは変態オヤジかっつうの!


響輔が食事をする様をぼんやりと眺めていると


「聞いとる?」と響輔は少しだけ眉を吊り上げた。


質問の内容が本当に聞き取れなくて


「え?」


あたしはサーモンとフレッシュ人参のサラダをつついていたフォークを休めて、向かい側に座る響輔に耳を寄せた。


午後四時。


周りは学校の何かの部活帰りなのだろうか汗臭い男子高校生や、営業の合間の休憩に利用しているサラリーマンや、ぺちゃくちゃとお喋りに余念がない主婦の集まりで、賑わっている。


そう


ここは、あたしの宿泊しているホテルではなく、ホテルから100mほど離れた場所に位置するファミレス。


「腹減ったな」と響輔の一言で、ここに移動した。




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