。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



響輔が髪を掻き揚げている手を休めて、目だけを上げる。


あたしは四人席のボックス席から立ち上がり、向かい側に座った響輔の隣へと腰を降ろした。


ちょっと驚いたように響輔が目を開き


「何なん?」と唇を尖らせる。


あたしは響輔の腕に、自分の腕を絡ませると





「ありがと」





たった一言、呟いた。


何に対しての感謝か、なんて私自身も分からなかった。同じように響輔もどう反応すればいいのか分からない、と言った感じでひたすらに視線を泳がせている。


でも


いつもより素直になれる気がした。


響輔の肩にそっと頭を預ける。響輔は逃げて行こうとはせずにただじっとされるがまま。


周りの視線なんて気にしないわ。


だって―――あたしがずっとこうしたいって思ってたんだから。





「あたしは―――


響輔、あんたが傍に居てくれれば他に何も要らない」





あたしの初主演の映画『双りぼっち』で呟いた台詞。


死んだ双子の姉が妹を守る―――って、まぁありがちなストーリー。生前は仲が宜しくなかった姉妹だけど、死んでから姉妹愛が深まるって……まぁちょっとした感動もの。


『妹が居てくれれば、生きていてくれさえいれば何も要らない』


もう映画の撮りは終わってクランクアップしているけれど、今でもこの台詞を覚えている。


あたしはいつまで経ってもこの台詞の意味が分かんなかったし、理解したいとも思わなかった。


でも今なら分かる。






たった一人



大切な人が傍に居てくれるだけで


何かが変わる。






あたしはもう――――








迷わない。













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