。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
玄蛇の今日のいでたちはどこにでも居るサラリーマン風情。黒い髪をラフにセットしてこれといった特徴のない細身のスーツに身を包んでいる。
現に、あたしの不自然な行動を不審に思ったのか、
「どうしたん」
響輔が同じ方向を見ても、こいつは玄蛇の姿を見破れなかった。
「ううん
何でもない」
あたしは慌てて響輔の手を取り、
「喉渇いたわ。オレンジジュース取ってきて」
セルフサービスのドリンクバーのコーナーを目配せ。
「何で俺がいかなあかんねん」ブツブツ言いながらも結局は空のグラスを手に取りソファ席を立ち上がる響輔。
どーでもいい女にはそうでもなくても、(一応)彼女には優しいのね。
響輔の意識が逸れて良かった。
あたしは響輔がドリンクバーに向かったのをきっちり見届け、
再び玄蛇が立っていた方を見やった。
けれどすでにそこにあいつの姿はなく――――
ただ
眉を寄せて物悲しそうに突っ立ている残像だけが
目の裏に焼き付いた。
そしてテーブルに置かれた一枚の写真。
例のアイドルさまと俳優をフォーカスしたあの写真だけが―――何だか意味深に置かれているのを見て
その写真と玄蛇の悲しそうな表情とが
重なった。