。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
今夜も眠れない予感がした。
鴇田経由でドクターから処方された睡眠薬はあるけど……使う気になれなかった。
『まるでオペラ座の怪人のファントムみたいね』
マネージャーの言葉がふと蘇る。
『あの売れない女優を舞台の主役にするために、主演女優を殺すってやつ?』
『そうよ。そのリークした人物はあんたの熱狂的なファンかもね』
ファントム――――
―――――
……
あの後……人ごみの中で玄蛇を見つけた後、あたしは心ここにあらずで上の空だった。
響輔の会話も楽しい筈なのに、全然身に入らない。
何を勘違ったのか、響輔は
『どしたん。具合でも悪い?』
と、心配しだして
『ううん。大丈夫』と答えたつもりが―――結局のところ何も返せなくて
早めにホテルに帰された。
体調が悪かったわけじゃないけど、今は一人になりたかった。
響輔と居て楽しいはずのひとときが、急に実のないものへ変わっていった気がして何だか心が苦しくなった。
大人しく響輔と別れるとホテルに戻って最上階のバーラウンジでアルコールを入れることに。
通された席は、窓際の二人席。
ウェイターはどうやらあたしが待ち合わせで利用した、と勘違いしているようだ。
いかにも女子が好みそうな…ぎっしり光が詰まった東京の夜景が眼下に広がっている。
BGMにピアノの生演奏と、jazzソングのヴォーカル。二人の見事な調和が空間を心地よく満たしていた。