。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
「いてッ!離せって!朔羅っ」
戒があたしに引っ張られながら尚も喚いている。
再び台所まで戻ってきたとき、あたしは戒の引っ張っていた袖をやや乱暴な手つきで離し
戒は引っ張られた場所をさすりながら小さくため息。ちょっとだけ乱暴な仕草で前髪を掻き揚げ
それでもその態度とは反対に
「……悪かった」
と、柔らかく謝ってきた。
「……謝るなよ……てか……
謝らないでくれ!」
ダーーーー!!あたしは滝のように涙を流した。
「どーしよ!!あたしっ!!リコに何ていやぁいいんだよ!!」
「そっちの心配!?お前……冷静だったと思ったらあまりの衝撃で我を忘れてたのか」
「そりゃそうだよ!リコ…フラれた上に、さらに失恋って……!
可哀想過ぎるっ!!」
わんわん泣くあたしを困ったように戒が慰めてくれて……背中をよしよしされながら
「川上にだっていいオトコが見つかるって!一ノ瀬なんかとお似合いじゃん??」
なんて無責任なこと言ってくる。
「千里なんて恋愛対象にならないよ!!」
「何なら合コン開くか?大阪のツレでいいなら紹介するし!あ、進藤にも頼んでやろっか」
「そんなガラの悪い男、リコに紹介できるかぁ!!」
「待っ!!ガラ悪い言うなや!(怒)進藤の方はそうやけど、俺の方はましやで!」
そんな言い合いをしているときだった。
強くなった雨粒の音に混じって、
ドン!
雷の轟音が轟き、
「キャァーーーー!!」
またも女子みたいな悲鳴を挙げて叫んじまったあたし。
……だって怖いんだもん(泣)
今度こそ冗談ではなく本気で半べそをかく。
遠くでゴロゴロ唸っている雷の音を耳に入れながら、その音から逃れるように耳を塞いでいると
ふわり
戒の腕があたしを優しく包んでくれた。
―――大丈夫だから
戒にそう言われている気がした。
戒のぬくもりに包まれて、
雷の音を遠くに聞きながら
「なぁ……キョウスケは―――
幸せなんだろうか」
あたしの問いかけは雷にかき消され、戒に届いたのかどうか分からなかった。
けれど
「あいつが選んだ道や。幸せにならんと俺がいてこましたる」
と小声で聞こえてきた。