ヒマワリ君の甘い嘘
「あっ、バイバ…______行っちゃった」
私が投げかけた言葉は、空虚に響いただけ。
「(さ、私も帰ろ…)」
下駄箱から靴を取り出して外に出ると、雨が降っていた。
ポツポツと、地面にシミを作って行くそれ。
あの匂いが、私の鼻をくすぐる。
高崎くん、華のこと好きなんだ。
華は凄く可愛いし、優しいし、人の事をいつも気にかけている人。
だから私も好きだし、きっと高崎くんもそんなところが好きなんだと思う。
私より前から、白石華を知っているんだ。
彼氏がいてもそれでもいい、と言った高崎くんのあの笑顔は、
いつもと変わらないように見えたけど、やっぱり少し寂しそうなのを感じた。
凄いな…
私もあんな風に言えたらいいのに。
私もあんな風に笑えたらいいのに。
私は雨の空気を思い切り吸い込むと、それをゆっくりと吐き出した。
カバンの中から水色の折りたたみ傘を取り出して、手際良く広げると学校の屋根の下から一歩踏み出す。
茶色い瞳の彼も、今この雨を見てるのかな…