アンダー・ザ・パールムーン


夏休みの予定。


誰とも約束せず、先輩からのラインを待っているわたしがまだいたりする。

可愛い水玉模様のパンツとブラセットも買っちゃってるし。



「はぁ…馬鹿だ……」


指先を見ると、まだ少し血が出ていた。


早く帰って消毒しよう…


歩調を早めた時。
行く手に『工事中』の看板が目に入った。



〈大変ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません〉


黄色いヘルメットを被った熊が頭を下げているイラスト。


フェンスの向こうの何もない土地。


わたしは立ち止まった。


あれ?
ここなんだっけ?何があったんだっけ?


いっぱいハテナマークが飛び交うが、しばらくすると思い出した。


あー、ここ、映画館「オデオン座」だ。

すっかり取り壊されて、更地にされて、雑草まで生えてる。
レトロな感じの映画館で、町に馴染んでたのに、残念だな。

先輩と一緒に来たかったな……


目の奥がじんと熱くなる。





< 11 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop