アンダー・ザ・パールムーン
夏休みの予定。
誰とも約束せず、先輩からのラインを待っているわたしがまだいたりする。
可愛い水玉模様のパンツとブラセットも買っちゃってるし。
「はぁ…馬鹿だ……」
指先を見ると、まだ少し血が出ていた。
早く帰って消毒しよう…
歩調を早めた時。
行く手に『工事中』の看板が目に入った。
〈大変ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません〉
黄色いヘルメットを被った熊が頭を下げているイラスト。
フェンスの向こうの何もない土地。
わたしは立ち止まった。
あれ?
ここなんだっけ?何があったんだっけ?
いっぱいハテナマークが飛び交うが、しばらくすると思い出した。
あー、ここ、映画館「オデオン座」だ。
すっかり取り壊されて、更地にされて、雑草まで生えてる。
レトロな感じの映画館で、町に馴染んでたのに、残念だな。
先輩と一緒に来たかったな……
目の奥がじんと熱くなる。