晴れ、時々、運命のいたずら
「大きな駅…。」
改札を出ると、穂乃花は思わず見渡しながら呟いた。
松本市は長野県でも第2の都市だけあって、松本駅も駅前に大きなバスターミナルがあり、ビルも数多く建ち並んでいる。
「松本は城以外にも上高地へ行く人が私鉄に乗り換えるから凄く栄えてるんだ。」
「千葉君…、何でも知ってるのね…。」
「松本市出身だからね!旭川って大きな町なの?」
「旭川は札幌の次に北海道で大きな町。だから駅前から真っ直ぐに伸びる大通りにはいつもたくさんの人がいるの。」
「へぇ~。」
「旭山動物園があるから、人が増えてるみたい。でも、旭川市街からかなり遠いんだけどね…。」
「旭山動物園、聞いた事ある!行ってみたいなぁ~。」
屈託のない笑顔で答える。
「それでさ、宮崎さん…。」
先程までの明るい笑顔がから急に少し言いにくそうな顔に変わって尋ねて来た。
「どうしたの…?」
「松本城までちょっと遠いんだけど…歩いても、いいかな?」
「えっ!?」
「いやぁ、バスの方が早いんだけど、お金がね…。」
恥ずかしそうな稔を見るのが初めてだったので思わず穂乃花は吹き出してしまった。
「私は歩いても大丈夫だよ。」
「ありがとう。良かったぁ。疲れるからイヤ、って言われたらどうしようかと思った。」
安心した表情を浮かべる。
(千葉君って、本当に素直な人なんだな。)
どこまでも明るく元気だけど、恥ずかしがったり、助けてくれたり…。
2人並んで松本城に向かって歩き出す。