晴れ、時々、運命のいたずら
「宮崎さんって。」
「ん?何?」
「長野に転校して来た初日に比べてかなり明るくなったね。」
言われて初めて気が付いた。
(確かに、私今日よく話してる気がする…。)
その理由は一つだ。
「千葉君がいつも親切に接してくれるから…。」
「もし、俺が宮崎さんを明るくさせているのなら、本当に嬉しいなぁ~。」
(千葉君だけだよ、私にこんなに優しくしてくれるの…。)
小学生の頃から人見知りをする性格の上に声も小さいので、自分から人と関わる事を避けてきた。
いじめ等はなかったが、放課後に大勢の友達と遊ぶ事もなく、自然と1人で公園に来ていた。
毎日、公園のベンチに座り、そこから見える景色を頭の中に入れていく。
そして思い付いたポエムをノートに書き留める。
いつの間にか一日の中で一番幸せな時間になっていた。
それが、長野へ転校してきて変わってきている。
長野でもポエムは書き続けている。
けれどそれ以上に明るく接してくれる稔の存在が穂乃花の中で大きくなっていた。
(今まで男子とまともに話した事がなかったのに…。)
自分でも不思議に思う。
稔とは素直な気持ちで話す事が出来る。
松本城へ行こうと誘われた時、戸惑ったが、心の中のどこかで嬉しさがあったと実感している。
なので、松本に来た事はポエムを書きに行く楽しみよりも、稔と一緒にいる楽しみが穂乃花の心の中を支配していた。