晴れ、時々、運命のいたずら
駅前から一度左折し、千歳橋を渡るとすでに松本城は目の前に大きく見えていた。
「立派なお城…。」
「だろ!」
稔が胸を張って答える。
その一つ一つが可笑しくて思わず笑ってしまう。
城は大きな堀で囲まれており、堀の水がキラキラと輝いている。
「堀の中は公園で芝生が生えていてとても綺麗になっているけど、お城がもっと綺麗に見える場所があるんだ。」
稔は堀に架かっている橋を渡らずに、堀の外側に沿って歩きながら、城の西側に回り込んだ。
「ここから見える城が一番綺麗なんだ。」
城に向かって架かる赤い橋。
そしてそびえ立つ松本城。
白の石垣が橋の鮮やかな赤い色を際立たせているように見える。
「さぁ、思う存分にポエムを書いて!」
張り切って言ってくる言葉に圧倒されて、穂乃花は少し俯いた。
「隣で見られていると…。」
「ん?どうした?」
「恥ずかしくて書けないよ…。」
「あはは、そうだよね。ごめん。」
稔は頭を掻きながら後退りしていく。
「俺も久し振りだからちょっと一周してくるね。」
そう告げると、再び堀に沿って来た道を戻って行った。