いつまでも
「そっか、吹奏楽部か...」


小さく呟いたイサワくんの声を、私は聞き逃さなかった。


顔はさっきまでと変わらず、笑顔だった。

でもその目は、目の前にいる私を捉えてはいなかった。
ぼんやりと遠くを眺めている。


そう、それは初めて彼を間近で見たあの日のものと、まったく同じものだった。


彼はどこを見ているのだろう。
何を探しているのだろう。

笑っている分だけ、その表情がなんだか切なくて儚くて、思わず目をそらしてしまう。

なんだか見ていられなかった。


しかしそんな表情を見せたのも一瞬で、彼はすぐにまた話題を振ってくれた。

そちらにつられた私は、その時はすでにあの遠い視線のことなどすっかり忘れ去ってしまった。


私がこの時の彼の言動の真意を知るのは、この日から約1ヶ月後のことである。
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