いつまでも
それから当たり障りのない世間話をしているうちに、気づけば5限目開始まで残り10分となっていた。

時計を見たイサワくんが言う。


「次の授業は移動教室だから、そろそろ戻るね」


それに応えるように、私も話を切り上げる態勢に入る。


「うん、わかった。わざわざ時間割いてくれて、ありがとう」


だけど、何かを忘れているような気がしてならなかった。

なんだろう。
何か言わなくちゃいけないんだけど。


私がもやもやしているあいだにも話が終わり、図書室の入口へと彼は移動していた。


何かすごく大切なことを忘れているような気がするのに、思い出せない。
それはいったい何?


「それじゃあ、またね」


笑って手を振りながらイサワくんが扉に手をかけて開きかけた、その時ーー


「あ!」


考えるよりも先に声が出ていた。

思ったよりボリュームが大きくなってしまって、びっくりしたように彼が振り向いた。
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