木曜日の貴公子と幸せなウソ
でも、それを言葉にする事はできなかった。
涙がじわじわと浮かんできたから。
好きだけど、一緒にいても苦しいだけ。
どうせ叶わないんだから、優しくされると困る……。
会計を済ませて、病院を出る。
先輩は私の通勤カバンを肩にかけて、私を支えながら車へと誘導してくれた。
助手席に押し込まれるようにして乗せられた後、通勤カバンは後部座席に置いた先輩。
「何か欲しい物とかある?」
「……いえ」
「んじゃ、萌が好きなココア」
「……もう子どもじゃないです」
ムッとして言うと、先輩は笑った。
「好きなものに子どもも大人もあるかよ。……それに萌は全然変わってないよ」
「……子どもですみませんね」
「そういう意味じゃない。変わらずに可愛いっていう事だ」