木曜日の貴公子と幸せなウソ
サラッと平気な顔で言うなんて、ズルい。
言われた私は、こんなにドキドキしているというのに。
先輩は全く表情を変えない。
言い慣れているのかな……?
ドキドキして顔が赤くなっていると思われたくなくて、顔を隠すようにエプロンのポケットに入っていたマスクを装着する。
「……なあ、萌。話をする余裕ある?」
「ありません……」
「顔色よさそうだし、聞くだけならできるだろ?」
「頭痛いです。眩暈もします」
話なんか聞きたくない。
先輩が今、どんな風な家庭を作っていて、いかに幸せなのか……。
子どもはどれだけ可愛いのかなんていう話は、お断りだ。
「それだけハッキリ答えられるのなら大丈夫だ」
「……聞きたくありません」
私の声は、消えそうだった。