木曜日の貴公子と幸せなウソ


運転する先輩に聞こえたのか聞こえていないのかはわからない。

ただ前を向いて、表情も変えずに運転している。


「次、コンビニ見つけたら家の住所言って。ナビに入れる」

「……え?」

「じゃなきゃ、家に送れない。それともオレの家に来る?オレ、今日は有給取ってるから休みだし」

「……バカですか?それ、何のための有給ですか。私なんか放置で、さっさと行っちゃってくださいよ」

「バカはお互い様。んじゃ、オレの家で決まりね」


そう言うと、先輩は右折レーンに入った。

……バカはお互い様。

言われたくないけれど、本当にそうだ。

私は観念したように深いため息をつく。


「……わかりました」

「安心していいよ。うちにココア買ってあるから」


先輩はそう言ってクスッと笑った。

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