木曜日の貴公子と幸せなウソ
「あー、良かった。萌、てっきりあの体操の先生とデキてるのかと思ってたし」
「……有坂先生と?」
「仲良さそうだったじゃん。オレ、すげー嫉妬した」
……ああ、そっか。
だからあんなに何度も不機嫌そうな顔をしていたんだ。
私が有坂先生と話すから……。
「けど、あの先生もなかなか意地悪だな。萌に本当の事を教えないなんて」
「……え?!有坂先生、邦章がエミちゃんのお父さんじゃないって知ってたの?」
「ああ。でも、教えてあげてませんって、この前言ってた」
『脅迫材料にならないしね』
不意に有坂先生の言葉が頭の中に響いて来た。
あの時の言葉の意味は、コレだったんだ……。
エミちゃんのお父さんじゃないから、不倫にはならない。
だから、脅迫材料にはならない。
そういう事だったんだ……。