木曜日の貴公子と幸せなウソ
知っていたのなら、教えてくれてもよかったのに。
こんなに悩まずに済んだと思うし。
……でも、教えてくれたとしても信じたかはわからない。
「後で幼稚園に電話しないと。明日は出勤できますって」
「じゃあ、明日はここに泊まりで」
「……えっ?」
邦章の言葉に、持っていたれんげを落としてしまった。
「別に変な意味じゃない。萌と一緒にいる時間を増やしていきたいんだ」
「……う、うん」
バカみたい。
1人で動揺するなんて。
こういう時こそ、大人な対応しなくちゃならないのに……。
「クリスマスは、予定あけておいて。7年ぶりに一緒にクリスマスを過ごそう」
「うん」
「大みそかやお正月も。7年前は一緒過ごせなかったし」
「うん」
私が返事をすると、邦章はなぜかクスッと笑った。
「……これから少しずつ7年分の時間を埋めていこう。そして、いつか……」
「いつか……?」
私の問いかけに彼は答えなかった。
代わりに邦章は、人差し指を口にあてて微笑む。
「それはまた、改めて言うよ。別の機会に」
~END~


