木曜日の貴公子と幸せなウソ
「先輩ってば……」
「すげー顔赤い。やっぱり、萌は可愛い」
頬杖ついて笑顔で言うものだから、何も言えなくなってしまう。
やっぱり、大みそかに見た光景は何かの間違いだったのだろうか?
こんなあったかく笑う先輩が、私を騙しているなんて思えない。
「あの……先輩って、お姉さんとか妹さんいますか?」
フワフワロングの女の子。
テーブルの下で、キュッと拳を作って、思い切って聞いてみた。
「ああ、いるよ。姉が」
「……あ、そうなんですか」
お姉さんがいる……。
じゃあ、私が見たあの人も、みんなが見たって言う女の子も、きっとお姉さんなんだ。
ホッと胸をなでおろす自分が少しみじめに思えてくる。
こんな風に、回りくどい聞き方するなんて……。