木曜日の貴公子と幸せなウソ


自由登校の状態なんだろうけれど、実質、卒業式まで春休みみたいなもの。

受験が終わってしまった人は、卒業旅行に行ってしまう人もいるし、県外に進学や就職が決まった人は、引っ越しの準備とか始めるだろう。

就職組は研修もあるらしいし。


「……寂しい?」

「もちろん」

「ウソつき。萌よりオレのが寂しさ強い」

「……そんな事ないし」


競うように言った先輩が、少しだけ可愛く見えた。


「あ、ゴメン」

「はい」


急に先輩は立ち上がってポケットからケータイを取り出した。

耳に当てながら、外へと出る。


「……あ」


小さく声が出てしまった。

だけど、その声は先輩には聞こえないほど小さなもので良かった。



おそろいだと言って買ってくれたストラップ。

先輩のケータイには付いていなかった……。


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