木曜日の貴公子と幸せなウソ
キャラメルマキアートは、さっきと比べて冷めてはいたものの、まだほんのりとぬくもりは残っていた。
カップに口をつけると、少しだけ唇がヒリヒリする。
それと同時に、さっき先輩とキスをした事を思い出して、ポッと頬が熱くなるのがわかった。
あんなにサラッとキスができちゃうなんて……。
「……」
ポッとしたのも一瞬で、すぐに頬の熱は冷めていった。
サラッとできるのは、慣れているという事?
先輩のケータイに、おそろいのストラップがついていなかったダメージが大きいのか、どうしてもマイナスの方向に物事を考えてしまう。
「……帰ろ」
1人で悶々としたくなかった。
先輩が置いて行ったコーヒーと、まだ残っているキャラメルマキアートが入ったカップを手にして、返却口に置くと、私はカフェを出た。