アルマクと幻夜の月

瞬間。


イフリートの体が煙か霧のようになって、するすると水差しの中へ入っていった。


「これでいいか?」


煙がすべて水差しの中に入ってしまった後、イフリートの声が聞こえた。

――水差しの中から。


「……あ、ああ」


呆然と水差しを見つめながら、アスラは答える。

すると、水差しから再び煙が出てきて、それがみるみる人の形を作り、

一瞬の後には美貌の青年の姿となっていた。


信じがたいが、信じるしかない。――本物だ。

いや、本物のランプの魔人でなかったとして、少なくともイフリートは人ではない。
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