アルマクと幻夜の月

そこでアスラはようやく気がついた。


――ランプの魔人は、ランプの持ち主の願いを叶えるという。

それが、どんな願いであろうと。


「おまえは、あたしを主と言ったな」


アスラは言った。


「なら、あたしの願いを叶えてくれるのか」


表情こそ動かさなかったが、アスラの心臓は早鐘を打っていた。

――もしかしたら、ナズリの病を治せるかもしれない。


「そうだな……」


イフリートは、なぜだか悲しそうに眼を伏せた。


「我が主、汝の願いは何だ――と、本来なら、こう尋ねるべきだが」


が、という一文字に、アスラはひそかに絶望した。

――そうか、叶えてくれないのか。
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