アルマクと幻夜の月

「……話にならない」

アスラはため息をついた。

「どこにあるか見当もつかないものを、探せだと? 何年かかるかもわからないのに。

その前に母上が亡くなる可能性のほうが大きいじゃないか」


言ってしまってから、胸が締め付けられるように痛んだ。

本当はアスラにもわかっている。――母は、もう長くない。


見つかるかどうかもわからないもののために王宮を抜け出して、立場が悪くなるのは母であるナズリだ。

もう長くない母に追い打ちをかけるような真似をすることと、どこにあるかもわからないランプを探すことと。

――天秤がどちらに傾くかなど、決まっている。
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