専務が私を追ってくる!
「それにしてもあいつ、遅いな。3時半には会社に着くとか言ってたのに」
「飛行機が遅れたという情報はありません。バスの時間からして、そろそろ会社に着いていると思うのですが……」
などと社長と園枝さんが噂を始めた時、コンコンとノックの音がした。
しかし、私の背後にある扉は、彼らの返事を待たずに開いた。
無礼をよそに、顔を上げた社長と園枝さんは笑顔を浮かべる。
「おお、来たか!」
「来たかじゃねーよ、クソオヤジ。話が急過ぎだろ」
背後から聞こえてきたその声に、聞き覚えがあった。
「俺は昨日まで別の会社で働いてたんだぞ。送別会でほとんど寝てねーし、二日酔いだし、少しくらい休ませろっての」
会社のトップである社長に文句を垂れながら私が座っているソファーの真後ろまで来た彼を、恐る恐る見上げる。
まっすぐに社長を睨みつけているその顔に、見覚えがあった。
「落ち着け、修(おさむ)。女性の前だぞ」
オサム——……!
そして名前を聞いた瞬間、私の頭は真っ白になった。
こんなことが起こるなんて、とうとう神様は私を見限ったのかもしれない。
今私の真後ろに立っているのは、西麻布で出会い、赤坂のホテルで熱を交わした、あの男だったのだ。