専務が私を追ってくる!




東峰バス株式会社、専務取締役。

専務といえば、社内では全ての部署の仕事に影響力を持つ要職だ。

肩書きだけ見れば立派に感じるかもしれないが、そんなことはない。

朝決められた時間までに出社して、汗水垂らして働く社員である。

付き合いやら何やらで夜中まで拘束されることがよくあるし、土日祝日もどこそこの社長さんとのゴルフやらバーベキューやらに駆り出されることがある。

されど給料は現在のところ、普通のサラリーマンに毛が生えた程度しか頂けない。

労働基準法の保護を受けないため、残業代も休日出勤代も出ない。

「あーもうほんと割に合わねー!」

跡取り息子の悲しき口癖である。

そしてこの口癖が出る度に、専属秘書である私は決まってこう告げるのだ。

「12月にボーナスがたくさんもらえるよう、頑張ってお仕事しましょうね。専務」

すると彼は少し拗ねた顔になって、

「わかってるし」

と子供みたいに頬を膨らませるのだ。

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