専務が私を追ってくる!
「ありがとうございました。またお待ちしております」
「はーい」
店員のお姉さんに見送られながら、フレッシュな気持ちで店を出る。
店のエリアから一歩踏み出すと、目の前を見覚えのある男性が通り過ぎた。
私は彼の顔を認識した瞬間、条件反射で踵を返す。
「お客様?」
店員さんが驚いて声をかけてくれる。
「すみません。知り合いの男性がいたから、下着屋から出るのが恥ずかしくて……」
店員さんは察したように微笑んで、「ごゆっくりどうぞ」と言って引いてくれた。
ドッドッドッドッドッ……
動悸がするし、嫌な汗が出てきた。
なんで?
どうしてこんなところに、修がいるの?
ここ、レディースのフロアなんですけど!
私は下着の陰からそっと修が歩いていった方を覗いてみる。
修は中央エスカレーター前のフロアマップのところで、ノートを片手にレディースのフロアをキョロキョロしている。
なにあれ、不審者じゃん。
今日はスーツではなく、紺のジーンズだ。
白のトップスの上に黒の薄いニットを羽織り、腕まくりしている。
あのノートはおさむ帳だ。
背負っているボディーバッグに入れて持ってきたらしい。
休みの日なのに、あの様子は仕事をしているに違いない。
……って、悠長に覗いている場合じゃない。
見つかる前に今すぐ逃げなくちゃ!