専務が私を追ってくる!
修がタバコを一本吸い終わるまで、私たちはしばらく黙ったままだった。
無言の間、視線で互いを探り合う。
チラッと見て、逸らして、もう一度見たら目が合って、慌ててまた逸らす。
ワイン・クーラーの味なんて、もうほとんどわからない。
動きすぎていた心臓がボサノヴァのリズムに乗ってきた頃、修は煙を深く吐いて火種を落とした。
そして次に目が合ったタイミングで、静かに語り出した。
「俺は……あの日の君に救われたんだ」
「救われた?」
「ちょうどあの頃、4月から会社を手伝うことが決まって。前にも少し話したけど、自信がなかった。北野さんも園枝さんもいるし、本当に俺が東峰バスを継ぐべきなのかって悩んでた」
あの日と同じ、物憂気な横顔。
私はこの横顔に一目惚れした。
本気でかっこいいなと思ったし、私がしたことに、後悔はない。
「だけどあの日、郡山さん、大袈裟なくらい俺を褒めてくれただろ。俺付きの秘書ならもっと頑張れるって、言ってくれただろ」
「全て、本心でした」
「それが効いたよ。現役秘書がそこまで言ってくれるなら、俺にも才能があるんだって自信が湧いた」
「こんな私でも、お役に立てたんですね」
「その後のショックも大きかったけどね」
「……すみません」