キスから始まる方程式
「南條……さん……」
私には気付かず、楽しそうに話しながら並んで歩いて行く翔と南條さん。
「う……そ……」
自分の目も耳も、何もかもが信じられない。
ドクン……ドクン……
心臓の音だけが頭の中に反響し、これは現実なのだと私に告げている。
ガクガクと震えて崩れそうな膝をなんとか励まし、そのまま踵を返した私は、全てを否定するように闇雲に走り出した。
嘘……嘘……嘘だよ……こんなの嘘だよ……っ!
周囲の目も気にせず、ひたすら長い廊下を走り続ける。
あんなこと言うんじゃなかった……。
冗談でも、付き合えばいいじゃんなんて言うんじゃなかった……っ!
後悔と共に瞳いっぱいに涙が溢れ、目の前がぼやけてもう何も見えなかった。