キスから始まる方程式
「……翔……」
無意識に出てしまった私の言葉に、麻優と桐生君も入り口へと視線を移す。
「あっ……」
「ちっ……」
それと同時に、二人の表情が一斉に曇った。
「あ、あのね、七瀬っ……」
不機嫌そうな桐生君に対して、麻優はどこか焦っているようにも感じる。
そっか……。麻優が私に言えなかったのは、桐生君じゃなくて翔のことだったんだ……。
互いに避け合っている私と翔を間近で見てきた麻優からしてみれば、この状況をなかなか言い出せなくても当然かもしれない。
そんなことを考えていると私達の視線を感じたのか、翔がこちらに気が付いた。
「あ……」
互いの視線が交差する。
けれど、今となってはもう「おはよう」の言葉すらかけることができない。
予想通り翔は私を避けるようにすぐさま視線を外すと、何事もなかったかのように友達のもとへと行ってしまった。
翔……今年は同じクラスなんだ……。
一年の時も二年の時も、翔と一緒のクラスになれるようあんなに神様にお願いしてもダメだったのに、その願いがまさか今になって叶うとは……。
あまりにも意地悪なイタズラをする神様を、おもわず呪いたくなった。