キスから始まる方程式


「何やってんだ俺……」



ふっ、と自嘲めいた息を吐き、自己嫌悪ともとれる言葉をポツリと呟く桐生君。


その声は、わずかに掠れていた。



「桐……生君……?」



明らかに様子がおかしい桐生君に、小さな声で問いかける。


しかし返事は返ってこない。



桐生君、どうしちゃったんだろう……。



長い沈黙のせいで、ドクン……ドクン……と不安を告げる鼓動の音がどんどん大きくなってゆく。


どうしたらいいかわからなかった私は、いつの間にか桐生君の力が緩んで自由になった両手を、そっと桐生君の背中に回した。



ピクン



瞬間、桐生君の体が跳ね上がる。


それから間もなくして、ようやく桐生君が長い沈黙を破った。

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