キスから始まる方程式
そういえば翔、さっきから随分道を遠回りしてるみたいだけど……。
合宿棟裏から校舎にある保健室に行くルートは、途中で校庭の脇を通って行くのが最短ルートなはずだ。
にも関わらず、先程から見ていると翔の通る道は合宿棟裏から始まり部室棟の裏、体育倉庫の裏、管理棟の裏……と明らかに人通りが少ない死角になるような道ばかりを選んでいる気がする。
そうすることによってかなりの遠回りにもなるし、私を背負っている翔の負担もだいぶ増えると思うのだが……。
もしかしたら翔の気遣いで、私がおんぶされているところをなるべく他の人に見られないようにしてくれているのかもしれない。
いや、待てよ? さすがにそれは自分の都合がいいように考えすぎか……。
どちらかといえば、翔自身が南條さんにこんな姿を見られるのを懸念しての行動というほうがしっくりくる気がする。
むしろそう考えるほうが自然だし、当たり前だろう。
そんなことをひとり考えていると、不意に翔がなにやら真剣な様子で声をかけてきた。
「ところでさ、アイツは……七瀬がこんなめにあってるの知ってるのか?」
「アイツ……?」
翔が言っている“アイツ”が誰のことかわからなくて、一瞬言葉につまる。
そんな私の疑問に気付いたのか、すかさず翔が言葉を付け加えた。