キスから始まる方程式
「お前の彼氏」
「あぁ、桐生君?」
「そう。まさか相手がアイツのファンクラブとやらの連中なんだから、一応話くらいはしてあるんだろ?」
「…………」
翔の予想外の質問に、なんと答えるべきか躊躇する私。
正直に「話してない」と言うのもなんとなく言いづらいし、かといって嘘をついてまで「もちろん話してあるよ」と言うのもどこか気が引ける。
しばらく黙ったまま考え込んでいると、すぐに肯定も否定もしない私の反応に長年の付き合いからピンときたのか、翔が驚いたような声を発した。
「おまっ、まさか言ってねーの!?」
「えっ!? いや、それはその……ねぇ……」
あはは、と苦笑いする私に、慌てた様子で翔が言葉を続けてくる。
「それじゃアイツは、七瀬が毎朝嫌がらせされてんのも全然知らないってことか!?」
「……うん……。……って、あれ……? なんで翔、私が毎朝嫌がらせ受けてたこと知ってるの?」
「う……っ」
なんとなく引っかかった疑問を私が口にした途端翔が言葉につまり、進めていたはずの足もピタリと止まってしまった。
……? なんか翔、様子が変……。それに私、朝の嫌がらせのこと誰にも言ってないのに……。
背中におんぶされているため、ここからでは翔の表情を窺い知ることができずどうすることもできない。
相変わらず停止したままの翔を不審に思った私は、再び同じ疑問を口にしてみた。