キスから始まる方程式
「ねぇ翔? なんで翔がそのこと知ってるの? 私、誰にも言ってないのに……」
「うっ……、えっと……それはだな……」
しどろもどろになりながら、翔が上ずった声で言葉を続ける。
「呼び出しくらってリンチされるくらいだから、当然今までにそんくらいの嫌がらせはされてるんだろ~な~っていう……。そうっ! あくまでも一般論だなっ、一般論!」
「ふ~ん……」
なんだか少々怪しい気もするが、翔がそう言い切る以上きっとそうなのだろう。
私も根が大雑把な性格なだけに、まぁそんなものかと簡単に納得し、それ以上特に追及するようなこともしなかった。
コホン、とひとつ咳払いをしたあと、「それはそうと……」と翔が改めて話を戻す。
「なんでアイツに言わないんだ? アイツだって全く無関係ってわけじゃないんだし、それに七瀬がアイツの彼女だってんなら尚更……」
「うん……、そうなんだけど……」
翔のもっともな意見に曖昧に頷く私。
本当ならばこのまま適当に話をはぐらかして話題を変えたいところだが、相手が翔だけになかなかそうもいかない。
先程も私の嘘を簡単に見抜かれてしまったように、また誤魔化したところで私のことを知り尽くしている翔にはどうせすぐに気付かれてしまうだろう。
それに実際にあんな場面まで見られちゃってるし、これ以上隠すのは無理か……。
そう判断した私は翔に気付かれないようにふぅっと小さな溜め息をつき、観念したように消え入りそうな声で淡々と話し始めた。