キスから始まる方程式
「あれ? なんかあったかくなってきた」
先程受け取って握りしめたままになっていた『物』をふと思い出し、そっと手のひらを開いてみる。
すると私の目に、真っ白なホッカイロが飛び込んできた。
パッケージから取り出してまだ間もないのだろう。
どんどん熱を帯びて行くそれを、冷え切った頬に押し当てる。
「あったか~い!」
ふふっ。まるで翔の笑顔みたい……。
反対の頬も温めようとホッカイロを持ち直した時、真っ白なはずの表面に何かが書かれていることに気が付いた。
「なんだろう……? 単なる製品の注意書きかな?」
それにしては文字の大きさが不揃いな気がする。
不思議に思い鞄から携帯を取り出し、その明かりを頼りに文字を確認してみた。
『カゼひくなよ!』
「!」
おそらく急いで書いたのだろう。
そこには黒のマジックで殴り書きされた、見慣れた翔の文字が並んでいた。