キスから始まる方程式
「翔……」
―― ポタリ……
翔が書いた文字の上に涙が一粒落ち、真っ白なホッカイロが黒く滲んで行く。
ポタリ……ポタリ……
止めどなく溢れてくる涙が、次々にホッカイロに黒い染みを作っては吸い込まれていった。
翔の不器用な優しさが、痛いくらいに私の胸を締め付ける。
「翔……翔っ……くっ……」
切なくてギュッと両手で握りしめたホッカイロが、それでも私に温もりをくれる。
「……翔……好きだよっ……。大好きだよっ……」
いつの間にか空から舞い降りてきた雪が、私の想いをそっと包み込んで地面へと落ち、やがて儚く溶けて行った。