Crescent Moon
生徒の前では吸わない。
それが、私のポリシーなのだ。
ここは、高校。
大学ではない。
ここに通っている生徒は、全員が未成年ということになっている。
私なんかの真似をして、煙草を吸われては困る。
煙草は、健康を害するもの。
私だってそのことを分かっていて、それでも吸うことを自分で選んでいるのだ。
吸うか、吸わないか。
それはちゃんと自分で判断出来る年齢になってから、考えて答えを出して欲しい。
憎たらしい、目の前にいるこの子にもね。
「あなた、転校生でしょう?」
私のその問いかけに、目の前の男は何も答えない。
「………。」
フッと笑って、無言で見つめ返すのみ。
「早くしないと、ホームルームが始まるわよ。」
ああ、なんて親切なんだ。
私ってやつは。
朝っぱらからこんなところでサボってないで、教室に行けだなんて。
私みたいな大人にならないでね。
お願いだから。
1つ忠告を残してから、私は屋上を後にした。
(あー、もっと煙草吸いたかったなー。)
ヘビースモーカーではないつもりだけど、それでも1本の半分も吸わないのでは口寂しくなるというもの。
イライラするとまではいかないけれど、名残惜しいのは確かだ。
後ろ髪引かれる思いとは、このことか。
でも、あのまま、あの場所で煙草を吸い続けることは出来なかった。
少なくとも、私には。
間違って、煙草を下さいなんて言われたら、私だってさすがにどうしようかと困り果ててしまう。
あの場に居続けることを選んで、あの子に何かを言われることだけは避けたかったのだ。
(何年に転入してきたんだろう………。)
1年ということはないだろうから、2年か。
それとも、卒業を控えた3年か。
転校生ということなら、そのどちらかになる。
(まさか、私のクラスにならないよね?)
というか、私のクラスになるなら、もっと早い段階で担任である私に知らされるはず。