線香花火
透明すぎる恋
* * *

「あれ…そーた兄ちゃんと…澪波ちゃん!?」
「由起子ちゃん!それと…あ、大輝くん!」
「な、なんで俺の名前知って…!」
「ゆっこと大輝も初詣か。」

 28日に実家に戻り、両親にも付き合っていることを報告し(どっちの親も大喜びときたものだ)、今日に至る。1月1日、元旦。近くの神社に聡太と初詣に来たところだった。

「…ほんとに付き合ってるんだ、二人。」
「ゆっこ、まだ信じてなかったの?」
「だって本物見てなかったもん。でも…。」

 目の前の由起子の視線は繋がれた手にある。いい年してこんなことをするのかと思われるのも恥ずかしいと思い手を離そうとすると、それを拒む強い手は澪波の手を解放してくれない。

「ラブラブ、なんだね。」
「大輝とゆっこみたいにラブラブだよ?」
「聡太!」
「ばっ!ちげーし!」

 真っ赤になって照れている大輝を見つめると自然と頬が緩む。そういえば随分前にもっと微笑ましい姿を見たような気がする。

「澪波…ちゃん…?」
「大輝くん、私とお茶しようか。」
「へ!?大ちゃんと!?」
「!?」

 声も出ず、表情だけで驚きを表現する大輝に思わず澪波もくすりと笑った。前から話したいと思っていたのだ。あの微笑ましい二人はどういう経緯でくっついて、今どんな風に幸せな毎日を送っているのかを。それも由起子からではなく、大輝から。

「由起子ちゃん、大輝くんを借りてもいい?」
「え、まぁ…あ、じゃ、そーた兄ちゃん借りてもいーい?」
「もちろん、どうぞどうぞ。」
「やったぁ!じゃ、大ちゃん、またあとでね!」
「おいゆっこ!てめぇ…!」

 由起子と聡太の背中が遠ざかっていく。それを見て諦めたのか、大輝は
澪波の方を向いた。

「悪いようにはしないわよ。そんなに警戒しないで。」
「…どこ、行くんすか。」
「んーと、駅前になんかなかったっけ?」
「あります、けど。」
「じゃあ駅前行こう。」
「…はい。」

 由起子といるときとは違いすぎるその姿に笑みが溢れそうになるところをぐっと堪えて澪波は歩みを進めた。
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