魔女の瞳
二人並んで、山を登り始めた。

山道はちゃんと舗装されていて、歩きにくさは感じない。

それよりも。

「すごいわね…」

中腹に近づくほどに強く感じられる気配。

魔道の匂いとか、殺気とか、そんな生易しいものじゃない。

言うなれば『死』そのもの。

あの廃工場には、『死』を具現化した存在がいる。

人間のように殺意を持っている訳でも、獣のように防衛本能で襲ってくる訳でもない。

ただ、そこに動くものがいるから殺す。

これから私達が対峙するホムンクルスは、そういう存在なのだ。

…いよいよ廃工場の前に立つ。

「一応言っておくけど」

私は言った。

「相手は慈悲の心なんて一切持ってないわよ?情けも手加減もなく襲ってくるから」

私なりの最後通牒だった。

今度こそ、本当に最後の逃げ出すチャンス。

なのに。

「おう、わかった」

彼は足元に落ちていた角材を拾い上げ、よし、とばかりに握り締める。

…もう、好きにしなさいよ。

溜息を一つついた後。

「行くわよ」

私は廃工場の扉の南京錠を『開錠』の魔術で開けた。



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