新選組恋愛奇譚
「私を信じてくれますか?沖田さん。」

沖田さんが私の方をブスッとしながらみる。

「信じられるわけないって言いたいとこだけど、とりあえず話は聞いてあげる。」

「沖田さん、私は未来から来たんです。」

「ふーん、それで?」

「え、驚かないんですか?」

「だって見たことない服来てるし、髪もゆってないし、あー、確かにって感じだもの。」

沖田さんがぽりぽりと頭をかく。

「で、なんで僕の部屋にいたの?」

「それは私にもわからないんです…」

私は部活の後からの話を伝えた。 

「ふーん。そ。で、話はそれだけ?」

沖田さんが刀に手を伸ばす。

「それだけです。沖田さんが信じてくれないならそれで構いません。」

怖いのを隠して、声が震えないように言い放つ。

私では最強とうたわれた剣豪、沖田総司に勝つことはできない。

信じてもらう以外道はない。

「声、震えてる。」

沖田さんの細くて綺麗な指が私の髪に手櫛を通す。

「嘘はついてないようだし、なんかキミのこと気に入ったから新選組においといてあげる。剣の心得もあるようだし。」

え……。信じてくれた……?

「ただし、ここにいるからには男の子のふりをしなきゃいけない。バレたら殺さなきゃいけない。性別を偽ることは犯罪だからね。できる?」

「精一杯頑張ります!」

嬉しさと戸惑いが半々というところだ。

でも殺されるよりましだ。

「あと、キミは僕の奴隷だから。僕の命令には逆らえない。わかった?」

沖田さんがニヤーと意地の悪そうな顔で笑う。

「はい……。」

「よろしい。」

沖田さんが私の頭をポンと撫でる。

「リコってよぶわけにはいかないからなぁ……あ、キミの名字ってなんだっけ?」

「綾戸です。」

「うん、男の名前として使えるね。今日からキミの名前はアヤト。わかった?」

「はい、わかりました。本当にありがとうございます!沖田さん!」

見返りなしにおいとくわけないってこと、わかってるよね?クス

沖田さんがなにか言っているきがする。

「なにか言いました?沖田さん。」

沖田さんがまたあの意地の悪そうな顔で笑う。

「なーんも。とりあえず今日はもう寝よ。明日も早いし。服とかは明日渡すから。その服はぬいで。今日だけは僕の服きていいから。あ、寝るところは床しかないから。我慢してね。オヤスミ、アヤトくん。」

そういって沖田さんが布団の中に潜り込んだ。

……………お母様、お父様。私は大変な世界に来てしまったようです。
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