新選組恋愛奇譚
2章
チュンチュン チュンチュン

鳥のさえずる声が聞こえる。

「んー、うーんっ」

「目、覚めた?アヤトくん。」

ん?アヤトくん?私は莉子だよ…?

「完全に寝ぼけてるねー。今すぐ起きなかったら襲っちゃうよ?」

襲っちゃう…?襲っちゃってもいいよ……って、

「ダメですぅ!?ダメですったらダメです!!」

布団をひっぺがしてたちあがる。

「おはよう、アヤトくん。随分遅いお目覚めだね。初日から主人である僕より遅く起きるとかすごい度胸だね、アヤトくんは。」

目の前にいるすごく綺麗な男の人がクスクス笑う。…って!?

「夢じゃなかったの!?」

昨日起きたことが頭の中で浮かんでは消える。

「残念ながらね。てか下僕のくせに挨拶もしないの?」

「す、すいません!沖田さん!」

頭をペコペコとさげる。

「ま、いいけど。てかキミ。声高すぎ。一瞬で女ってバレるよ?いいの?」

いいわけがない!!だめだ!

「ごめんなさいっ。」

「謝んなくていいから。別に僕が死ぬわけじゃないし。あと貧相な胸だけど、それじゃ女だってバレるよ。」

ひ、貧相ですってええええ!?ええ、わかってますよ。自分が貧乳なことくらい。

それでも腹が立つ。

「そんな膨れないで。キミはりすかなんかなの?さらしはそこの棚にあるから。勝手に使って。服はもう持ってきた。あと髪はこれで結いなよ。顔はどうしようもないね。女顔ですって言えば平気だと思うけど。」

「何から何までありがとうございます!沖田さん!」

感動で目がうるうるする。

「何その顔。泣けば可愛いとでも思ってるの?ハッキリいっとくけどぜーんぜん、これっぽっちも可愛くないよ?」

前言撤回。この人すごく意地が悪い。

「そうそう、キミを土方さんに紹介しなきゃいけないから着替えたら呼んで。そこの縁側にいるから。あ、土方さんっていうのはね知ってるとは思うけどここの副長。まずその人に女だってことバレたらその時点で終わりだからね。精一杯がんばりなよ。じゃあ。」

そういって沖田さんが部屋を出ていく。

綾戸莉子…じゃなくてアヤト、頑張りますっ!!
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