星降る夜に。
横村さんは笑いながら言った。

最初に会ったときのラフな服装とは違って、今日はちゃんとスーツ姿だ。



「店抜けて来てるから手短に言うね。大輔、体調崩してて。滅多に風邪なんて引かないのに、熱出して寝込んでるんだ。病院は行ったみたいなんだけど、アイツ一人暮らしだからさ。莉子ちゃん、仕事終わりでも様子見に行ってくれないかな」



「でも、私は…」




そんな関係じゃない、と言おうとしたら横村さんは私に鍵と、住所を記した紙を差し出してきた。



「大輔の家の鍵。何かあったときのために預かってるんだ。俺が行ってもアイツは喜ばないし、莉子ちゃんに頼みたい」



熱で寝込んでいるんじゃ、何も出来ていないだろう。

食事はちゃんと摂ってるのかな。汗をかいた着替えは…薬、ちゃんと飲んでるのかな。


一つ気になり出すと色々なことが浮かんで、私は横村さんから鍵を受取った。



「それから結婚指輪の刻印、出来上がってるから。いつでも取りに来て」



胸がドクンと激しい音を立てる。注文したんだから、オーナーである横村さんが知っていて当たり前なのに。
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