ためらうよりも、早く。
——チャンスは一度きり。だったら、はっきりさせてやろうじゃない。
「……高校時代、私をフッたのはどうして?
それに伴って、私の可愛いのんに手を出した理由もお聞かせ願える?」
「……意外だな」
ズバリと切り込んだ問いに対し、ポツリと小さく呟いた男。
今度は腕を組み、物思いに耽るように静かに目も閉じてしまった。
こちらとしては答えを待たされているわけで、妙な重苦しさが緊張感を増しているのに気づきもしない。
——今なら、グラスの水をぶっかけても良いかしら?……起こしてあげたのよ、なんて後付けすれば良いし。
あれこれ対策を考えても、結局のところグラスさえ手にせず、何も出来ない自分に腹が立つ。
仕方なく、のんがいつも羨ましいと言う、長い睫毛を伏せたままの祐史を見つめていた。
かっこいいと言われる顔と、知識や話題の豊富さでどんな相手も飽きさせない。そのくせ育ちの良さ特有のスマートさも兼ね備えている。
似合う人を選ぶ、ペール・グリーン色の細ネクタイも難なく着こなすそのセンス。また手足も長く、スーツの合うスタイルの良さも持ち合わせている。
これで超がつく一流企業の次代を支える立場にあるのだから、ハイスペックの男が引く手数多となるのも仕方ない。
——非常に癪だけれど、そんなヤツの縁談が聞かれなかった今までが異常だった。