ためらうよりも、早く。


それから暫くの膠着状態が続いたのち、大きな溜め息を吐き出したのは対峙する男の方であった。



「のんは確かに妹だった、……けど、酔って泣いてる顔に欲情したのがきっかけ」

目を閉じながら、とても気まずそうに告げられる。


今まで求め続けた答えを聞き、心臓はギュッと締めつけられたような痛みに見舞われた。


どこか懐かしさを孕んだような声とそれを語る今の表情。


そのすべてが、確かに祐史がのんに本気だった事実を匂わせていた。



「へえ、欲情ね……。
つまり、のんに本気とか言ったくせに、手近な女と寝る時の言い訳で“都合よく”抱いたってこと……?アンタの下半身ってほんとに緩いのね!
——アンタにとって昔馴染みって何?友達じゃないの?一夜限りの最終手段だったわけ?
どうなのよ?答えてよ!……返答次第ではアンタのそのムダに整った顔を数発殴るわよ」


私は護身術の修得はもちろんだが、超多忙になるまではボクササイズを習いにジムへ定期的に通っていた。


苛立ちのままにボキボキと関節を鳴らす私の顔は、間違いなく笑っていないだろう。


多分、パンチやキック力は草食男たちよりも強い。だから、女の力と侮れないことはこの男もよく知っているだろう。


——一向に収まらない怒りには、八つ当たりと嫉妬が含まれている気もするが。


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