ためらうよりも、早く。
優しさで誤摩化しているだけで、自分のことに関しては超がつくほど鈍感だ、と事あるごとに言ってきたのに。
「よくこの状況で余裕があるわね。——あ、修羅場の対応なんて朝飯前だっけ?」
というわけで、首を横に振って力なく笑った祐史を、今回こそは遠慮なく思いきり睨んでやる。
すると、「逃げることに慣れすぎてるな。……悪かった」と所在なげに口にした。
「何に対しての謝罪?それで話を濁したつもり?」
威嚇はそのままに、胸の前で腕を組んだ私はルブタンの赤ソールを一瞥しながら足を組む。
「違う、ちゃんと答えるからそんな怖い顔するな。頼むよ」
「へえ、低姿勢なんて珍しい」
「――あの時、のんに気持ちが揺れたのは本当だ。
でも、……尭が動いてやっと気づいた。その感情にやっぱり戸惑った」
「尭は一途よ。
本人は自分を虎視眈々と狙うハイエナだって言ったけれど、有耶無耶に襲うより潔いでしょ。
そんなことも知らなかった。……違う?」