ためらうよりも、早く。
「柚希?」と、呼び掛けた祐史は訝しげな顔でこちらを見つめてくる。
「何よ」
「あと言いたいことは?
出し惜しみはストレス溜まるだけじゃねえ?」
その嫌味な気遣いが琴線に触れる。ツンと目の奥に痛みを感じ、思わず泣きたくなってしまう。
再起不能になるくらい罵倒を浴びせたというのに。この男は、屈折した私を丸ごと受け止めるくらい優しい。
さっき、東条グループの人間としての一面を見せたのもそうだ。
私の負けず嫌いな性格を熟知した上で、敢えて怒りを増幅させて思いきり文句を言わせてくれる機会(チャンス)を作り出してくれた。
それらに気づいてしまうと、寸前まで祐史の懐の大きさを甘受する自分が心底イヤになった。
——だからこそ、肝心なこの場面ですべてを台無しになんて出来ないの。