ためらうよりも、早く。
「……もう、ヤリ捨てするんじゃないわよ」
真っ黒な瞳を見据え、淡々と告げる。それはまるで中空を彷徨うかのように散っていく。
絞り出した声音だって、先ほどまでの勢いはどこ吹く風。
寧ろ弱気な自分を見せないよう、取り繕うのに必死だった。
「しない、つーかするわけない。寸止め食らって俺も我慢の限界だし。
——もう無意味なことヤる時間が無駄って思い知らされた。……ごめんな」
小さく笑った彼から返ってきたのは弱音に混じりの優しさで、それがまた私を追いつめる。
無意味って理解していたクセに、焦燥感からキスの感覚が抜け切らない唇は震えていた。
「あー……、素直すぎて気色悪いのよ。
でも、風船男が溜めた“濃ゆいの”を受けるのも大変ね」
「それならタフだし、全く問題ないよ。——加減するのも醍醐味だしな」
「あのね。アンタが感じて昇天するのは二の次。女を目一杯に愛撫して感じさせなさい。
——それが抱かせて貰う上での礼儀よ。間違っても、欲に負けて突っ込むな」
「とか言って、前戯段階で何度も昇天しちゃうのは誰だっけ?」