ためらうよりも、早く。
思い起こせば、2人きりで本音をぶつけたのは久しぶりのこと。
別れてから生じていた、この関係に対する違和感までフッと消えてしまう。
結局、こうして向き合わなかったせい。近くにいすぎると、タイミングを逃すからダメね。
溜飲を下げることが叶ったのも、やっぱり祐史がきっかけを作ったとは皮肉なものだ。
「まだ攻略が足りねぇな」
「は?私を誰だと思ってるの?」
「天下無双の柚希さま」
嘘つきな笑みを作るのは簡単。けれど、心の底から笑えたのは別れてから初めてだった。
とは言え、別れの真相は分からず仕舞い。けれど、もう許してあげるわ。
引っ掛かっていたコトを質せた。素直に認めて謝ってくれた。……もうどうにもならない過去について。
「悪いけれど、ここで行かせて貰うわ。
クライアントと打合せが入ってるから会社に戻らなきゃ。ほら、中国って色々とあるでしょ?」
「なるほどね。頑張れよ」
「へー。アンタが労わりの言葉を掛けるなんて珍しい。
——ほんの少しは東条グループで成長したようね」
サラリと嫌味を返した私は、相棒の腕時計を一瞥しながら席を立つ。